
皆様は「シンセサイザー」という楽器をご存じでしょうか?
ピアノやギターに比べればまだまだ認知度は低いかもしれませんが、それでもほとんどの人が知っている、現代の音楽には欠かせない楽器の一つです。
しかし、その歴史や仕組みについて、詳しく知っている人は多くないと思います。
シンセサイザーの歴史は現代音楽の歴史、といっても過言ではなく、当時の技術や音楽シーンと密接に関わっています。
そんなシンセサイザーの魅力の一つでもある「歴史」をこの記事を通して紹介していきたいと思います。
シンセサイザーの歴史
~1950年代
シンセサイザーの歴史は古く、シンセサイザーの「元祖」と言われるテルミンが生まれたのが1920年代と言われています。

モーグ社製のテルミン(ウィキペディア(Wikipedia)より)
最初期は上記のテルミンやオンディオラインといった、楽器ではあるけれど今のように便利な電子楽器という感じではありませんでした。
現在のシンセサイザーと違い存在ではあるもの、まだまだ実用レベルではないものでした。
1950年代:電子楽器の誕生
1950年、それまで軍事技術だったコンピュータが世界に広がるとともに、電子音楽も急速に発展していきます。
この時代にClavivox(クラヴィヴォックス)という、後の『モーグ・シンセサイザー』の前身ともいえる初期電子楽器がアメリカ人のRaymond Scottの手によって開発されました。
Clavivoxはオシレーターこそ搭載していないもの、そのサウンド生成回路は、60年代半ばに発表される『モーグ・シンセサイザー』と多くの類似点があり、後のシンセサイザーの発展に影響を与えました。

Clavivox(クラヴィヴォックス)(ウィキペディア(Wikipedia)より)
ただ、まだ実用レベルというわけではなく、珍しく奇天烈で、おかしな音のする面白い道具、といったところでしょうか。
以下の動画は電子音楽のパイオニアの一人と称されるジャン=ジャック・ペリーが出演した「I've Got A Secret」というアメリカのTV番組です。
音楽番組というよりはコメディー番組のようなタッチで、シンセサイザーが紹介されていることから、楽器というよりは珍しい道具のように扱われていることがよく分かります。
1960年代:電子音楽黎明期
1968年、ついに本格的なアナログシンセサイザーが誕生します。
それがロバート・モーグ博士が開発した『モーグ・シンセサイザー』です。
いわゆる『モジュラー・シンセサイザー』という形式で、さまざまなパーツがモジュールという部品に分かれており、
それをケーブルで接続して、楽器としての構造自体を組み立てて音を出す、といったものでした。
そしてこのモーグ・シンセサイザーを使用したWendy Carlosの『Switched-On Bach』が大ヒットし、シンセサイザーがさらに認知されるようになります。

モーグ・シンセサイザー(ウィキペディア(Wikipedia)より)
ただ、この時点では一般的に広く普及するものではありませんでした。
その理由として、価格が標準的なもので当時の6,000ドル(1ドル=360円で216万円)程度という、一般人には程遠い価格設定が要因と言われています。
1970年代:アナログシンセサイザー全盛期
そして70年代に入り、アナログシンセサイザーの全盛期を迎えます。
量産商品として発売されたMiniMoogは、それまで標準的なシステムが約6,000ドル(1ドル=360円で216万円)だったのに対し、
1,375ドル(495,000円)と安価になり、ダウンサイジングに成功したこともあって世界中のアーティストに愛用されました。
また、Moogだけではなく、KORGやROLANDなどおなじみの楽器メーカーがこぞってアナログシンセサイザーを発売しました。
この時代に量産型のシンセサイザーが多く出回った影響で多くのミュージシャンがシンセサイザーを使用し始めました。
『テクノポップ』という言葉が生まれたのもちょうどこの頃で、YMOやクラフトワークなどが人気を博し、電子音楽の今日における礎を築きました。
終わりに
ここまでシンセサイザーの誕生と発展について見ていきました。
この記事では70年代までのシンセサイザーの歩みを見ていきましたが、この後、デジタルシンセサイザーやソフトウェアシンセサイザーの誕生によって、より音楽作成に欠かせない楽器へと進化していきます。
他の楽器にがない『テクノロジーとともに発展する楽器』の魅力が少しでも伝われば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。