
『アウトプット大全』は作家であり精神科医もある樺沢紫苑さんの、アウトプットについて紹介している書籍です。
当記事では脳科学に裏付けられたアウトプット術を、図も交えながら分かりやすく解説していきます。
本書ではアウトプットを「話す」「書く」「行動する」と3つに分類しており、本記事ではその中で「話す」ことにスポットを当てた内容となっています。
「話す」ことのアウトプットを実践すれば、自分だけではなく取り巻く環境を変えることができます。
もし今、残業や休日出勤などで自分の時間が確保できない、という方には本書はぜひ読むべき1冊だと思います。
なお、アウトプットの前準備、正しいアウトプットとその方法についてについては以下の記事で紹介しています!
アウトプットを実践するための大切な基礎知識を取り上げてますので、ぜひ読んでいたればと思います。
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図解で解説『アウトプット大全』要約 ~アウトプットの重要性編~
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目次
『アウトプット大全』がおすすめなのはこんな人
こんな方におすすめ
- コミュニケーションに苦手意識がある
- 人や会社からの頼みを断れずつい受けてしまう
- 自分の思いや望みを伝えるのが難しいと感じる
- 人と議論をするのが苦手
本記事では『アウトプット大全』に収録されている「話す」を中心としたアウトプットにスポットを当てていきたいと思います。
また、その内容を『基礎編』と『応用編』の2つに分け紹介していきたいと思います。
『基礎編』は伝えることの心構え・伝え方を主に紹介します。
『応用編』では、実際に第三者とコミュニケーションを行う上での具体的な方法とその効果を紹介していきたいと思います!
伝わる話し方:基礎編
「話す」ことも立派なアウトプット!
「アウトプット」と聞くと一見難しそうなイメージがありますが、「話す」ことも立派なアウトプットの一つです。
個人的には、「話す」ことに長けた人は、どんな職種・業界でも優秀な存在の印象が強いです。
僕はシステムエンジニアという一見「話す」こととは無縁の思える職種ですが、この業界でも例外ではなく、お客様の要望を正確にキャッチアップし、製造側に的確に伝えられる人材が重宝されます。
それでは「話す」についてどんなことから始めればいいか、本書では「ただ起きたことの感想を話せばいい」といいます。
読んだこと、聞いたこと、自分が体験したこと、それについて、第三者に言葉で話してみましょう。
~中略~
脳内にある情報、あなたの考え、思考、想いなどが言語化されて外界へ吐き出される。
ただ「感想を話す」だけで、脳は活性化し、記憶の増強、定着にも大きく貢献するのです。
『アウトプット大全』 P40 科学に裏付けられた、伝わる話し方 より
そして、その感想に自分の意見や気づきを入れると「自分らしさ」が生まれ「あなたの話」になり、価値が生まれます。

事実に感想&意見をセットにするとアウトプット力アップ
ポジティブな言葉とネガティブな言葉の割合が利益を生む
仕事であろうと過程であろと、一人でない以上はそこに「コミュニケーション」が生まれます。
本書では、その「コミュニケーション」の中のポジティブな言葉とネガティブな言葉の割合によって「いいチーム」か「そうでないチーム」かが分かれるといいます。
ポジティブな言葉とネガティブな言葉のバランスを変えるだけで、仕事も人生も結婚生活もうまくいくことが、ポジティブ心理学の研究で判明しています。
逆をいえば、ネガティブな言葉が多い人は、仕事も人生も結婚生活もすべてうまくいかないということです。
『アウトプット大全』 P42 科学に裏付けられた、伝わる話し方 より
また、本書掲載のポジティビティ比に関するいくつかの研究の「ポジティブ」と「ネガティブ」の比率と因果関係が以下になります。
夫婦関係研究の大家でもある、心理学者ジョン・ゴットマン博士の研究では、ポジティビティ比が5対1を下回ると、夫婦は高い確率で離婚する傾向がみられることが観測されています。
このことは夫婦のみならず、友人関係や職場関係にもあてはめられることだと思います。
当人は特に他意なく言った何気ない一言でも、日頃からうまくいっていない状態だと悪意を持った言葉に聞こえてしまう、そしてその状態が続くとさらに関係は悪化し、崩壊してしまう。
本書でも、ポジティブなアウトプットを増やしていかない限り、望む結果は得られないとしています。
耳を傾けてもらうためには「内容」より「どう伝えるか」
もし「なんで正しいことを言っているのに、耳を傾けてくれないんだ」と思うことがあれば、ぜひとも意識していきたいことが本書に掲載されています。
それは、「話す」ことによって聞く人が受け取るのは話す内容だけではない、ということです。
コミュニケーションは、大きく「言語的コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」の2つに分類されます。
心理学で有名な「メラビアンの法則」があります。
メラビアンの法則とは、「矛盾したメッセージを発せられた時の人の受け止め方についての研究」で、言語・視覚・聴覚で矛盾したメッセージが発せられたとき、どれを信用するかという実験です。
視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%。
私たちは、言葉の意味内容そのものよりも、視覚情報や聴覚情報を重視しているのです。
『アウトプット大全』 P46 科学に裏付けられた、伝わる話し方 より
この事から、相手に何か伝えるときは、その内容はもとより伝え方が重要ということになります。
大切なことをだらしなく伝えても、その優先度や緊急度は伝わらず、相手の記憶にとどめておくことをできません。
もしあなたが、「正しいことを主張しているのになぜ伝わらない」と嘆いているのであれば、
相手を圧迫するような態度をとっていないか、誠実な姿勢で向き合っているか、という点を見返すと、今まで見えなかった発見があるかもしれません。
伝わる話し方:応用編
基礎編では「話し方」において大切な姿勢を主に紹介してきました。
応用編ではコミュニケーションの中での「話し方」を見ていきたいと思います。
質問で学びの方向性が定まる
本書で「質問する」ことの重要性を紹介しています。
そして「他者への質問」より、「自分への質問」が脳を活性化させ、必要な情報を集める力を引き起こすと紹介しています。
脳の「選択的注意」とは
脳の「選択的注意」とは、Googleなどの検索機能と同じようなもので、事前に単語登録しておくことで、膨大な情報の中から必要な情報を拾い出せるようにしておくこと。
この「選択的注意」を発動させるための単語登録が「質問する」ということ。
自分が何を学びたいか、何を得たいかをインプットの前に再確認して注意を促すことによって学びの効率性アップにつながります。
断る勇気をもつ大切さ
日本人は元来、断るのが苦手な民族と言われています。
現代の僕たちの周りにも、「断りにくいお誘い」というものは往々にして存在するのではないかを思います。
残業た休日出勤、飲み会などなど、断ると職場の人間関係に支障をきたすのではないかと断れない人も多くいらっしゃると思います。
ただ、本書では「断らない人」は、自分が本当にやりたいことに対して、エネルギーと時間を振り向けることができなくなっている、と指摘しています。
そして断ることと断らないことのメリット・デメリットを整理したうえで、本当に自分に大切なものは何か、ということに目を向けるべきであるとしています。
「断らない」と起こること | 「断る」ことのメリット |
・自分の大切な時間が奪われる
・睡眠、休息時間が減り、疲れやすい ・頼めばなんでも受けてくれる「便利屋」だと思われる。 ・「やりたくない仕事」の依頼が増える ・ストレスがたまる ・「残業」や「休日出勤」をしても結局昇進にはつながらない |
・自分の大切な時間を確保できる
・本来すべきことに、エネルギーと時間を集中できる ・意志の強い人という印象だと思われる ・「やりたい仕事」の依頼が増える ・ストレスがなくなる ・自己投資に時間が使えて、定時の時間でしっかり結果が出せる |
僕自身、断るのが苦手な人間なので、残業や休日出勤を断るには勇気が必要なこともよくわかります。
しかし、そういったことを断って自分のために時間を使うことは自分自身と向き合うこと、後悔しない人生を選ぶ第一歩でもあります。
これは、自己啓発の源流といわれるアドラー心理学でも提唱されていることでもありますが、
断ると評価が下がるかもしれない、といった不確定かつ自分の本当の望みではないかもしれない不安定な未来を生きるのではなく「今ここ」にいる自分がどうしたいかに強烈なスポットを当てて選択するべきです。
そう考えればおのずと断る勇気、嫌われる勇気が湧いてくるのではないでしょうか?
論破のためではなく、目標達成のための『議論』をする
「断る」ことと同様に日本人は「議論」や「ディスカッション」が苦手な民族と言われます。
ディスカッションが得意とされるアメリカでは、小学校から「ディベート」の授業があり、議論する力や自分の意見を述べる力が鍛えられているから、と言います。
本書ではこの「議論」の上達方法について紹介しています。
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1議論の練習をする
議論は生まれつきの能力ではありません。訓練をすれば誰でも議論は上達します。
とにかく議論の経験値を増やす、これに限ると本書は主張します。
ただ「会社の方針」といった重要な議題では利害関係が絡み感情的なしこりが残る可能性があるため、「本」や「映画」といったライトな議題から始めることをお勧めします。
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2議論と感情を切り離す
議題が重要なものであればあるほど感情的になる場合があります。
しかし必ず意識しておくべきなのは、「議論」と「感情」は切り離して行うべきであり、そのトレーニングも必要です。
お互いのための議論の結果、お互いを憎みあうことになるのはどう考えてもおかしいです。
常に「議論」と「感情」は切り離して考えるように心掛けましょう。
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3流れを予想する
議論が苦手な方は、その議論でどういったデータ・資料が必要か把握・準備ができていないことが多いと本書は指摘しています。
不思議なことに、議論や苦手な人ほど事前の準備をしない。議論が得意な人ほど、資料やデータを用意しています。
ということは、「議論が上手」「話し方が上手」かどうかより、どれだけ事前に周到に準備するかで結果が決まるのです。
『アウトプット大全』 P74 科学に裏付けられた、伝わる話し方 より
上記の事から議論が苦手な方は、事前準備を見直すとそこにヒントが隠されているかもしれません。
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4想定問題集を作る
会議や議題が苦手な方は、会議の場で何を聞かれるか、何を話せばいいのか不安な気持ちがあるのではないでしょうか。
本書ではそんな方に「想定問題集」を作ることをおすすめしています。
会議で出そうな質問に対して、事前に文章をまとめておく。そうすれば質問が出ても瞬時に適切な回答ができるはずです。
では、何問くらいの「想定問題集」をつくるべきか。その場合、参考になるのが「10ー30ー100の法則」です。
『アウトプット大全』 P74 科学に裏付けられた、伝わる話し方 より
この「10-30-100の法則に」よれば、想定問題10問で70%、30問で90%、100問で99%の問いカバーできるイメージです。
通常は30問で十分にカバーできる量と言いますが、その会議の重要性によって判断してもいいかもしれません。
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5最初に意見をいう
心理学によると「最初に出た意見」というのは話の軸として機能することが多く、結果的にその議論の中で強い影響力をもつ傾向があるそうです。
また、この方法はとても簡単かつ、発言してしまえば強制的に議論に参加できるため、先述した『議論に参加する』というステップのクリアにもつながります。
より良い表現のための関連書籍の紹介
断る勇気を持つための『嫌われる勇気』
断ることのメリットの紹介で一部触れましたが、断ることの大切さがわかっていても中々勇気が出ない、という方には、
自己啓発の源流、アドラー心理学の教えが描かれている『嫌われる勇気』がぜひおすすめです。
自分の意思を表明して生きることの大切さが身に沁みます。
僕は本書で転職を決意したほど、強い影響を受けた一冊です。
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嫌われる勇気要約まとめ ~嫌われる勇気が教えてくれる「幸せになる勇気」とは~
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自分を知るための『メモの魔力』
「アウトプット大全」を読んで自分の意見の表現方法を知ることも大事ですが、まずは「自分はどういう人間か」を理解し迷いをなくすことが先決です。
『メモの魔力』を読むことで、「自分はづいうことに喜びを感じるか」という根本的なことに気付けます。
メモに今興味はない方にもおすすめの内容です。
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『アウトプット大全』の紹介についてはここまでとなります。
ここまで見てきた通り、話すことによるアウトプットは自分の能力の成長のためだけではなく、周囲に自分を知ってもらうための表現方法でもあります。
いきなりすべては難しいかもしれませんが、良質なアウトプットを意識することで少しづつ自分の能力を向上させることは可能だと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました!