
この記事ではシンセサイザーの音作りの基本、「オシレーター」「フィルター」「アンプ」の概要と役割について紹介します!
前回の記事でシンセサイザーの基本構成について紹介しました。
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シンセサイザー入門① ~シンセサイザーの基礎知識・基本構成~
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この記事ではさらに一歩踏み込んで、基本構成である各部品(モジュール)の役割について紹介していきたいと思います。
なお、この記事はアナログシンセサイザーが主な対象ですが、オシレーターをはじめとするモジュールはプラグインシンセサイザーでも変わりはありません。
これらのモジュールの役割を把握し、自由な音作りに生かしましょう!
シンセサイザーの各モジュールの役割
以前の記事と重複しますが、シンセサイザーの基本構成を改めて振り返ります。
すべてが同じ、というわけではありませんが、アナログシンセサイザーの基本構成はほとんどが以下のようになっています。
「VCO」「VCF」「VCA」とありますが、これらを「モジュール」と呼び、それぞれのモジュールが役割を果たすことで最終的に音が生成され出力されます。
その役割を一つずつ見ていきたいと思います。
まずは「VCO」から紹介していきます。
音の基本となる波形を作る「VCO」
VCOとは「Voltage Controlled Oscillater」の略で、日本語だと「電圧で制御された発振器」という意味になります。
「電圧で制御された発振器」というと、なんだかとても複雑な機器という印象を受けますが、難しく考えず「元となる音を生成する」部品、と考えていいと思います。
なお、VCOの「VC」はアナログシンセの頃の制御方法の名残のため、現在は「オシレーター」と呼ぶほうが一般的かもしれません。
オシレーターで操作できるのは、「波形」と「音程」です。
「波形」とは何か?という点について詳しく紹介すると、科学の分野になるので割愛しますが、音とは波になっており、その波の形によって音色が変わります。
オシレーターでは、この音の波を作成できる機能に加え、波の形(波形)と、1秒間に上下する波の回数(周波数)を操作することも可能です。
アナログシンセサイザーでは、シンプルな数種類の波形が用意されています。
それがサイン波、ノコギリ波、三角波、矩形波、パルス波、ノイズなどと呼ばれる基本波形です。
これらの波形をそれぞれ音の特徴があり、作りたい音に追わせて、時には複数のオシレーターで波形を組み合わせたりして音を作り出します。
オシレーターの波形については以下の記事で詳しく紹介しています。
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シンセサイザー入門④ ~オシレーターの波形の種類と使いどころ~
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音程の設定に関しては、オクターブ単位で音程変更できるものや微調整できるものまで、様々なものがあります、
なお、デジタルシンセやプラグインシンセでは「PCM音源」という、実際の楽器の音を録音してそのまま使う方式のものもあります。
余計な音をカットする「VCF」
VCFとは「Voltage Controlled Filter」の略で、日本語だと「電圧で制御されたフィルター」という意味です。
こちらもオシレーターと同じく、「フィルター」とだけ呼ぶほうが一般的です。
フィルターの機能は、「不要な音をカットして、必要な音だけ残す」と、その名の通り「音のフィルタリング」をするものになります。
「何をカットして、何を残すか」に関しては、フィルターの数種類あり、選んだフィルターによって決まります。
ここからはよく使用されるフィルターの種類を紹介します。
細かい機能は違うものの、基本的には「不要なものをカットする」という肝心の機能は同じです。
ローパス・フィルター(Low Pass Filter/LPF)
これはロー(低い音)をパス(通過)させるフィルターなので、ローパス・フィルターのつまみを右に傾けるほど、フィルターの機能が働きハイ(高い音)をカットするようになります。
そのため「ハイカット・フィルター」と呼ばれることもあります。
よく使用される手法としては、オシレーターでノコギリ波のように倍音を多く含む波形を用意して、不要なものをローパス・フィルターでカットしていくという方法があります。
フィルターのつまみ(カットオフ・フリケンシー)を最大にするとすべての音が通過し、逆に0にするとすべての音がカットされ無音状態になります。
ハイパス・フィルター(High Pass Filter/HPF)
ローパス・フィルターと逆の働きをするフィルターです。
つまり高い音を通過させ、低い音からカットしていくフィルターです。
ベースとなる音を作るのには適しませんが、高い音が際立たせたいとき使用されます。
バンドパス・フィルター(Band Pass Filter/BPF)
ある特定の周波数帯域(バンド)だけを通過され、その上下をカットするフィルターです。
バンド幅を設定するパラメーター(ウィズ、Q)があり、広く設定することで中音域全体が通り、狭く設定することで特定の周波数を強調できます。
いわゆる「こもった音」を作りたいときに使用されます。
ノッチ・フィルター(Notch Filter)
バンドパス・フィルターと逆の働きをするフィルターです。
指定した周波数帯域をカットしてその上下を通します。
他の楽器とぶつかる部分をカットしたり、ハウリングを起こす帯域をカットするなど、補正用に使用されるフィルターです。
また、フィルターには「レゾナンス」という重要な機能があります。
レゾナンスとは、フィルターでカットした周辺の音を分かりやすく強調する機能です。
この機能のつまみを上げるほど癖の強い音となり、これを利用した音作りもあります。
音量を決める「VCA」
VCAとは「Voltage Controlled Amplifier」の略で、日本語だと「電圧で制御されたアンプ」という意味です。
この機能は、言うまでもなくアンプ、つまりボリュームを制御します。
ただし注意が必要なのは、通常のアンプは一定の音をただ出すだけのシンプルなシステムです。
つまり、アンプとは音量を決めるだけで、鍵盤を押すと音が出て離すことで音が消える、あるいは、鍵盤を話した後の音の減衰をコントロールする、などといった楽器らしい機能はまた別の機能になります。
また別の記事で紹介したいと思いますが、音の減衰などを表現するには、アンプと「エンベロープ・ジェネレーター」を組み合わせる必要があります。
多くのシンセでは、アンプのボリュームつまみの周辺にエンベロープ・ジェネレーターが存在しますが、内部的には別の機能となります。
終わりに
シンセサイザーの基本構成のモジュールについての紹介は以上になります。
ここで紹介したモジュールは、シンセサイザーが音を出すための最低限必要な機能です。
アンプの章で少し触れましたが、シンセサイザーで「楽器らしい音」を表現するには、この記事で紹介した機能とは別にエンベロープ・ジュネレーターやLFOなどのモジュレーター機能が必要です。
モジュレーターについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、興味のある方はご一読いただければありがたいです。
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シンセサイザー入門③ ~楽器に近い音を作るためのENVとLFO~
続きを見る
モジュレーターで音の変化やバリエーションは増やせますが、「好みの音」を作る基本はやはりオシレーターとフィルターの機能によることが多いです。
これらの機能を理解し活かすことで理想の音作りに役立てていきましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。